鳥取県境水道のヒラメ
2007.10.21  小林氏

 秋はターゲットの選択にあれこれと迷う季節だが、境水道でのマゴチ・ヒラメ釣りを取材した雑誌のグラビアを見て、今週はここに行こうと決めた。こう書くと、安直な選択と思われるかもしれないが、そこには私なりの思惑もある。境水道は、関西に転居してから十数年間中断していた投げ釣りを再開するきっかけとなった、私にとって特別の場所である。そして、再開後に唯一のマゴチを釣ったのもここである。その後はこれらの魚種とは縁遠い私だが、あそこに行けば何とかなりそうな予感がする。雑誌の情報は、以前からの計画を実行する上でのきっかけに過ぎず、後は自分なりの勝算(思い込み、とも言う)に賭けるだけのことだ。果たして、どう出るか?

 目的地が決まると、気になるのは週末の天候である。予報によれば、20日の土曜日は冬型の気圧配置となり、季節風が吹き荒れそうだが、日曜なら風が緩む見込みである。というわけで、21日午前0時に大阪を出発する。当日は若潮で、満潮が午前8時47分、干潮が16時34分。午前中から夕方にかけてダラダラと引く潮なので、日中は暇になりそうだが、昼寝の時間は十分確保できるだろう。そして、朝夕の潮変わり前後に集中して釣れば、マゴチならほぼ確実、運がよければヒラメも・・・と、あまり根拠のない楽観的プランを思い浮かべつつ、深夜の中国道を西に走り、米子道を経由して日本海に出た。

 さて、今回の釣りの準備段階でもっとも重要な点は、エサとなる活きアジの確保である。米子ICから境港にいたる国道431号線沿いには、深夜または早朝営業の釣具店が何軒もある。そのなかの一軒に立ち寄り、小アジの釣れ具合を確認するとともに、アミエビ一袋を購入する。予備エサとして前日にスーパーで購入したイワシ5パックも含めて、エサ代は1500円未満、なんとも安上がりの釣りである。コンビニで食料も調達し、午前4時に釣り場となる鳥取県漁連前の岸壁に到着する。

境水道大橋
釣り座から境水道大橋、中海方面を望む
水道出口方面
釣り座から水道出口方面を望む
 県漁連の建物の前には、漁船や自動車に氷を供給する施設が2つ並んでいる。東側の施設には常夜灯が点灯し、海面を淡い光が照らしている。その光に小アジが寄っていそうなので、ここを釣り座とすることに決定。まずは4本の投げ竿に仕掛けをセットして、塩で締めたイワシをつけて投入する。そして、懸案の小アジの調達に取り掛かる。幸いにも、サビキ仕掛けを足下に投入するとすぐに反応があり、目標とする40匹の小アジを難なく確保できた。その半分をエアレーションした容器に移し、もう半分は活かしバケツに入れて海中にストックする。そして、イワシをアジに付け換えて、いよいよ本格的に戦闘開始である。

 その後は何ごとも起こらないままに5時間が経過した。11時頃、漁船が氷を補給するために給氷施設の前に接岸したので、200mほど西側に移動を余儀なくされる。エサを小アジに換えてからは、エサ取りが頻繁に出没した。首筋を鋭く抉るもの、ハリスごと千切っていくもの、頭を齧るもの、下半身だけ掠め取るものなど、エサがとられるパターンは一様ではない。その正体はイカ、フグ、・・・後は思いつかない。いずれにしても、これらに付き合っていると、夕マズメを迎える前にアジのストックが尽きてしまう。移動を契機に、全ての仕掛けをイワシに付け換える。そして、傍らに停めた車の座席で食事を摂り、すこし休憩をとることにした。

塩イワシ
塩イワシの刺し方
 空はよく晴れ渡り、気温も上昇して、水道を吹き抜ける風が心地よい。周囲を見渡すと、初めて来た時と変わらぬ、懐かしい風景である。あれは確か1995年7月のことだった。旅行の道中にこの境水道に立ち寄り、久し振りに海での釣りをしてみたくなったので、近くの釣具店でコンパクトロッドを買い求め、花町岸壁でそれを振ってみた。すると、15pぐらいのキスやカサゴ、手足が鮮やかなコバルト・ブルーの台湾ガザミなどが次々に釣れ、そして一際強いアタリと引きに驚きながら、巻き上げてみると20pぐらいのチャリコであった。何が掛かったのか?と、固唾を飲んで見つめていた水中に、ピンクの魚体が浮かんできた時の興奮は、いまも記憶のどこかに残っている。ただ、あの頃とは何かが変わってもいる。

 あれから12年が経過し、私の道具や知識はその間に格段に進歩を遂げて、あの頃には望むべくもなかった大モノを釣ることもできるようになった。だが、手の平級チャリコに心を躍らせた、かつての自分はもういない。むしろ、チャリコを煩わしいエサ取りのように感じているのが、いまの自分である。・・・でも、それは釣りがより楽しくなったということなのだろうか?大モノを釣って大きな喜びがあるように、小モノにもそれなりの喜びがあったのではなかったか。程度の差はあれ、釣れて嬉しいという気持ちに変わりはないはずなのに、いつの間にか小さな喜びは煩わしさの感情に変わってしまった。いまの自分は、果たして心から釣りを楽しんでいるのだろうか?・・・

 そんなことを考えている内に、いつしか私は眠りに落ちていた。そして、その眠りは、竿が三脚と接触する衝撃音によって中断された。
ヒラメ
ようやく釣れたヒラメ

 寝ぼけ眼で音がした方向を見ると、一番手前の赤竿が三脚の上で前のめり状態である。慌てて車外に飛び出て、竿を手に取り、遮二無二巻き取ると、すぐに水面に魚が浮かんだ。ところが、なぜか魚の姿が見えない(メガネをかけ忘れていたのでした)。そのまま抜き上げると、40pくらいのヒラメであった。私にとって初魚種であるこのヒラメは、忘れていたあの興奮を呼び起こしてくれた。サイズは小振りながら、なんとも凶暴な面構えである。私が小アジかイワシだったら、ヒラメにだけは食われたくないな〜と思いつつ、飲み込まれたマゴ針をプライヤーでつかんで外す。時計は12時15分を指していた。それが今回の唯一のハイライトであった。
ハリスは深く傷ついていた
鋭い歯、ハリスは深く傷ついていた

 今まで私が経験したノマセ釣りは、夜釣りの後に1〜2時間というパターンだった。今回は初めて終日やってみたが、アタリも遠く、なかなか根気のいる釣りである。釣れた時間帯、当たり餌、釣れた魚種など、いずれも当初の見込みが外れたが、それでも釣果があったのは幸運だった。やはり、境水道はこれらの魚影が濃いのであろう。ここに通って経験を積めば、狙い目も徐々にわかってくるのかもしれない。しかし、この周辺には他魚の好釣り場も多いのが生憎だ。すぐに目移りしてしまう浮気性の私が、この釣りに上達するのは、あまり容易な道ではないかもしれない。

[釣果]
ヒラメ 41.5p


[仕掛け]
竿   :daiwaトーナメントサーフT30-405
リール :daiwaトーナメントサーフ・ベーシアQD
道糸  :ナイロン5号
ハリス :フロロカーボン7号
針   :OH丸貝専用7号の直列2本結び*
オモリ :遊動海草天秤30号
エサ  :塩イワシ)

*今回ヒラメが釣れたのはO社製の市販仕掛けでしたが、この仕掛けは投げ釣りに向かないことが判明したので、自分が普段使っている手製の仕掛けを表記することにします。


管理人より:
小林さんの思い出の場所でのヒラメ、おめでとうございます。
さぞ、感慨深い1匹だったことでしょう。
アジが外道にやられる、伊豆半島ではウツボかイカ類、浅場ではエソと相場が決まってますが、そちらはもっと多様な魚がアジを狙っているようですね。
チャリコの話、興味深く読ませて頂きました。大物を狙いだすと忘れてしまう、あの「魚が釣れた」喜びが小林さんに戻ってきたのかもそれませんね。
ちなみに管理人はチャリコなら素直に嬉しいです。ハイ。


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